アルミの比熱・熱伝導率について解説!EBINAXの技術もご紹介
技術コラム #08
アルミの熱に関する基本情報(比熱、熱伝導性など)と他金属との比較、また放熱効果を活かしたアルミの用途について、機能めっき会社のEBINAXが解説します。熱輸送効率を向上する弊社の技術についてもご紹介しますので、熱排出量について課題がありましたら、ぜひ弊社にご相談ください。
アルミの比熱、熱伝導率などの基本情報と弊社の技術をご紹介
アルミは比熱や熱伝導率が高い金属で、加工性も高く安価なことから、放熱部品の素材として広く活用されています。
アルミの放熱特性を向上させるためには、熱伝導率の高い素材を選定することはもちろんですが、母材の表面積を増やすことも有効です。
母材の形状はそのままで表面積を増やすことができるのが、弊社のオリジナル技術「スゴヒヱ」です。
スゴヒヱは特殊な形状を持った金属皮膜で、アルミなどに密着よく成膜できます。
比熱とは
比熱は物質の“温まりやすさ”を表します。
ここでは、比熱の他に熱を考える際に必要な熱量や熱容量についても説明します。
熱量とは
熱量(amountj of heat)とは、物体間で伝わる熱を比較できるよう、熱エネルギーを数値化したもので、次の通り表現されます。
熱量Q [J]、[cal]=質量m [g]× 温度差ΔT [K]
※1 [cal] = 4.186 [J]
比熱と熱容量
比熱(比熱容量、specific heat capacity)についてまずはご説明します。
比熱は、圧力・体積が一定の条件下で、物質1gの温度を1℃(1K)上げるのに必要な熱量のことです。
”温度の変化のしにくさ”を表しており、比熱の値が小さい方が、熱を伝えやすい物質だといえます。
比熱は次式の通りに表します。
比熱c[J / g・K] = 熱量Q [J] / 質量m [g]・温度差ΔT [K]
水1gの温度を1K上げるのに必要な熱量を1calと定義しているため、
水の比熱(18℃)は、1 [cal / g・K]=4.186 [J / g・K]となります。
この式を変形すると次式となり、ある比熱を持つ物質を任意の温度まで上げるのに必要な熱量が求められます。
熱量Q [J]、[cal]=質量m [g]× 比熱c[J / g・K] 温度差ΔT [K]
さらに、一定量の物質の温度を1℃上昇させるために必要な熱量を熱容量といいます。
熱容量C [J / K] or [cal / K]=質量[mg]× 比熱c [J / g・K] or [cal / g・K]
比熱は物質に固有の値で、物質「1gあたり」を対象としているのに対し、熱容量は質量を含むため、同じ”温度変化のしにくさ”を表していても、対象物質によっては数値が大きく異なる場合があります。
熱伝導率とは
熱の伝わり方は一般に、熱伝導、熱対流、熱放射(輻射熱)という3つの方法に分けられます。
熱伝導とは、原子・分子の振動、もしくは自由電子による熱の移動現象のことで、その”熱の伝わりやすさ”を表したものが「熱伝導率」です。
熱伝導率は、長さ1mあたり1℃の温度差がある際に、1秒間で1m2を移動する熱量を示し、単位は[W / m・K]で表します。
物質の状態や種類により異なり、数値が大きいほど熱が伝わりやすいといえ、気体<液体<固体の順に大きくなります。
熱伝導率は単位時間あたりに単位長さを流れる熱量なので、例えばフライパンを早く温めるには熱伝導率が高い素材が有利です。
この場合に比熱は関係ないですが、長時間フライパン上で温度を保つには、比熱が高い素材が有利となります。
アルミの熱(比熱、熱容量、熱伝導率)について
アルミの熱(比熱、熱容量、熱伝導率)について詳しく解説します。
比熱の他にも、アルミニウム合金、また他の金属との違いについてもあわせてご紹介しておりますのでご参考ください。
アルミニウムの特長
アルミは比熱が高いため、質量に対し、長時間一定の温度を保つのに適した金属です。
また比熱だけでなく熱伝導率も鉄の約3倍も高く、金属の中でもアルミは熱を伝えやすい特長があります。
さらに軽量で加工性が高く、低温でも脆性破壊が少ないため、アルミはヒートシンクなどの放熱用途で広く使用されています。
アルミニウム合金
一概にアルミといっても、そのほとんどが合金として使用されています。
アルミの合金の種類により熱伝導性は異なり、熱処理条件によっても差が生じます。
中でもヒートシンクに使用されることが多いのは、純アルミに次いで熱伝導率が高い「A6063」です。
A6063は形状の自由度が高く、アルミ地金を溶解してSi、Mgなどの元素を添加してビレット(塊)を造り、加熱しながら押出加工で希望の形状に造られます。
他の金属の比熱の違い
アルミは比熱が高く、熱伝導率も比較的高い金属ですが、金や銀、銅の方が熱伝導率は高く、アルミよりも放熱性は優れています。
大電流や高発熱の状況下では銅が指定されるようなケースもありますが、これらの金属は比重が大きく加工が難しいため、比熱が高いアルミの方が一般的に広く使用されています。
<金属元素の比熱、熱伝導率>
平均比熱(20-100℃, [J / g・K]) | 熱伝導率(20-100℃, [W / m・K]) | |
---|---|---|
Mg | 1038 | 155.5 |
Al | 917 | 238 |
Ti | 528 | 216 |
Fe | 456 | 78.2 |
Ni | 452 | 88.5 |
Cu | 386.0 | 397 |
Zn | 394 | 119.5 |
Ag | 234 | 425 |
Au | 130 | 315.5 |
Sn | 226 | 73.2 |
Smithells Metals Reference Book, 7th ed.(1992), Butterworth-Heinemann.
アルミは熱伝導率の高さから放熱部品へ活用されている
アルミの熱伝導率の高さは放熱部品に活用されています。
電子部品や半導体チップなどは、適正な作動温度が定められています。
これらの部品は長時間駆動することで熱が蓄積され、誤作動を引き起こしたり機器全体の故障の原因に繋がる可能性があるため、定期的に冷却して熱を取り除くことが必要となります。
代表的な放熱材料として比熱が高いアルミのヒートシンクが挙げられます。
これは空気中に放熱することで冷却する機構であるため、熱伝導性に優れたアルミが広く一般的に活用されています。
放熱特性は熱伝導率だけでなく、母材の表面積にも大きく影響するため、アルミは軽量で安価、さらに加工性が高いという点が魅力的です。
金属の熱伝導率や比熱だけでなくその形状、そして成形や加工性、トータルの予算などによって、最適な放熱材料は決まります。
※イメージ画像
アルミの熱輸送効率を向上!ヱビナ電化の技術「スゴヒヱ」について
アルミの熱輸送率を向上させる弊社オリジナル技術「スゴヒヱ」をご紹介します。
「スゴヒヱ」とは、めっき手法によって放熱特性を高める技術です。
具体的に「スゴヒヱ」にはどういった特長があるのか、また用途などを詳しく解説していきます。
放熱特性を向上させるには
熱伝導率は前述の通り素材に依存するため、放熱性を向上させるためには可能な限り熱伝導率が高い素材を選択することが重要です。
また、放熱性は表面積にも影響されるため、複雑な形状にすることで性能を向上させることが可能です。
ただし、アルミなどの素材の成形や加工には限界があり、どうしてもコストが高くなる傾向があります。
これらの手段で放熱特性の向上を考えると、母材の変更や形状の変更などが必要になってしまいますが、弊社のオリジナル技術である「スゴヒヱ」は既存の母材を用いて、表面積を増加させることが可能です。
マイクロフィン・スゴヒヱの特長
スゴヒヱは、めっきの表面形状を制御することで誕生した、弊社のオリジナル技術です。
工業的なめっき手法を用いるため、一度に全面の処理が可能で、レーザーなどと比較して短時間で処理ができます。
●約9~20万個/㎠の微細な突起形状
●5-10μm程度の金属皮膜
●低コストで大面積・形状品にも対応し、量産が可能
製品や部品への活用例【用途】
特殊形状を保有した金属皮膜は、比熱が高いアルミなどの金属のみならず樹脂にも形成可能なため、幅広い母材に適用いただけます。
一般的な電子部品や半導体デバイスなどの冷却用部品、ヒートシンク、熱交換器、CPU / GPU、べーパーチャンバー、ヒートパイプなどへの適用が期待できます。
アルミの熱排出量の向上はEBINAXにご相談ください
アルミの熱放出量を向上させたいという方は、まずは弊社へご連絡ください。
アルミはそれ自体が高い比熱・熱伝導率を持ちますが、今後様々なデバイスが進化する中で、現状以上の放熱対策が必要となるケースが増えていくように思います。
現行品の良さを活かしつつ、更に表面積を増加させ放熱特性を向上したい方は、ぜひ弊社の「スゴヒヱ」をご検討ください。
お気軽にご相談をお持ちしています。
また、今回はアルミ材への放熱特性の向上として「スゴヒヱ」をご紹介しましたが、弊社ではアルミ材に対するその他のめっき処理も可能です。
反射率1%以下の黒色めっきや、耐食性の向上を目的とした無電解ニッケルめっきなどがございますので、お気軽にお問合せください。
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