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燃料電池の電極材料を徹底解説!電極触媒の低コスト化が今後の課題に

技術コラム #05

燃料電池の電極材料は開発課題の一つです。

特に燃料電池のひとつ、固体高分子形(PEFC)などの電極触媒に使用されるPt(白金)は希少価値が高いため、コストダウンのために研究が進められています。

低コスト化以外にも、標準化するには耐食性・耐衝撃性・高性能が燃料電池の電極の材料に求められます。

今回は燃料電池に使用される電極部分の材料について詳しくご紹介します。

 

燃料電池の電極材料は電解質によって異なる

燃料電池の種類は電解質によって分類され、使われている電極材料も異なります。

燃料電池は、燃料として供給された水素と空気中の酸素が反応することで得られる、電気エネルギーを利用する点においてはどの燃料電池も共通ですが、セル内部の電解質の種類(KOH、高分子膜など)によりいくつかに分類されます。

電解質の種類により詳細な反応機構はそれぞれ少しずつ異なるため、当然ながら使用する電極材料も異なります。

また電解質ごとに作動温度も大きく変わるため、出力規模やプロダクトへの利用用途が異なってきます。

例えば、アルカリ形(AFC)、固体高分子形(PEFC)、リン酸形(PAFC)は比較的低温で作動するため、小型化することが可能です。

低温形の多くは高価な白金(Pt)系触媒を使用するため、自動車や携帯機器、宇宙事業向けなどの小型で特殊な用途での利用が検討されています。

これらに対し、溶融塩形(MCFE)、固体酸化物形(SOFC)は比較的高温で作動します。

高温のため発電効率は高いですが、大型な設備が必要となるため、発電所や分散型電源などに適しているといえます。

 

燃料電池 電極 材料 種類

 

燃料電池とは?

そもそも燃料電池とは、どのようなものでしょうか?

燃料電池とは、水素と酸素による化学反応によって発生した電流を利用する、電気の「発生装置」です。

反応の仕組みは、燃料として供給された水素が燃料極と呼ばれるアノード側で電子と解離し、水素イオンは電解質中を、電子は外部回路を経由してカソード側の酸素極に移動します。

この時、燃料極から酸素極へ電気が流れ、酸素極側では酸素と水素イオンが反応して水が生成します。

2次電池とは異なり、継続的に電気を発生することが可能で、排出物も水のみとクリーンなため、燃料電池は近年の脱炭素化社会に向けた技術としても注目されています。

 

燃料電池 電極 材料 解説

 

今注目の固体高分子形燃料電池(PEFC)の電極触媒の材料について

固体高分子形燃料電池(PEFC、Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、今注目を集めている燃料電池です。

燃料電池といえば、まず「燃料電池自動車(FCV)」を思い浮かべる方も多いと思います。

自動車用途の燃料電池は一般的に「固体高分子形燃料電池(PEFC)」が利用されています。

この燃料電池は、起動性に優れ、高出力密度による小型化、軽量化が可能という特徴があり、幅広い用途への展開が期待されています。

反対に作動温度が100℃以下と低いため、電極反応の発熱を利用できず、発電効率が他の燃料電池に比べて低いという欠点もあります。

ここでは、今後の展開が期待されている燃料電池(固体高分子形)の構造や電極触媒の性能、そして燃料電池で使われている電極の材料について解説します。

 

燃料電池(固体高分子形)の構造と電極触媒の性能

燃料電池(固体高分子形)は下図のように、電極で電解質を挟み込み、さらにそれらをセパレーターで挟むような構造となっています。

燃料電池の電極は触媒層とガス拡散層からなり、電解質は一般的にフッ素樹脂系の高分子膜が使用されます。

燃料極(アノード)側に水素、酸素極(カソード)側に酸素を含む酸化剤が流入すると、電極の触媒層で反応が生じます。

電極となる多孔質な炭素上には、反応触媒として一般的にPt(白金)系の微粒子(数nm)が付与されたものを用います。

電気の出力密度は構成する材料によっても左右されますが、特に酸素極となるカソード側の活性状況に大きく依存することが分かっています。

 

 

燃料電池 電極 材料 構造

 

固体高分子形燃料電池(PEFC)にPt系の材料が使用される理由

電極触媒にPt系材料が使われる理由とはどのようなものでしょうか。

PEFCは低温で作動することから、両電極での反応効率を向上させるために、電子伝導性の高いPt(白金)などの貴金属材料が電極触媒として用いられます。

炭素系材料にも電極触媒としての還元力はありますが、貴金属材料(Pt系)に比べて活性が低く、また最終的に反応過程で発生した過酸化水素のラジカル種が高分子膜を劣化させることが確認されており、Ptをベースとした電極触媒の技術開発が進められています。

※炭素材料では(O2 + 2H++2e- → H2O2)の反応が優先されます。

 

固体高分子形燃料電池(PEFC)の普及を進めるには

固体高分子形燃料電池(PEFC)の普及を進めていくには、今後どのようにしたら良いのでしょうか。

ここでは、固体高分子形燃料電池(PEFC)が抱える課題や、電極におけるPt系触媒の技術開発、そしてめっき技術についてご紹介します。

 

固体高分子形燃料電池(PEFC)の課題

固体高分子形燃料電池(PEFC)はいくつかの課題を持ち合わせていますが、最も大きなテーマとして“製造コスト”が挙げられます。

これは主に電極材料に使用されるPt系触媒が高価であることに起因しています。

リサイクル等も視野に入れながら、現行のガソリン車などの排ガス浄化触媒などと同等程度まで、触媒使用量を減らす必要があります。

電極材料のPtなど貴金属系材料の使用量を減らしつつ、標準よりも高い性能を得るために、触媒を活性化させて出力密度を向上することが求められています。

さらに、継続使用による負荷や走行環境下での安定性、機械的信頼性なども燃料電池車(FCV)には重要となります。

 

Pt系触媒の技術開発

電極材料で使われるPt系触媒の技術課題として、使用量削減のため活性を上げ、長期使用可能なように触媒安定性を向上させる必要があります。

Pt触媒の表面で化学反応が進行しますが、そのような環境下でも安定な電極、触媒担体となる炭素系材料の腐食を防止するなどの開発も進められています。

現状はアノード側に適用できそうなPt 系材用以外の触媒は見出されておらず、カソード側の開発に重点が置かれている状況ですが、カソード側だけでも代替技術の開発が進むことで、Pt系材料の使用量が大きく削減されることが期待されています。

 

炭素材料へのPt系触媒めっき技術

固体高分子形燃料電池(PEFC)での電極に、ガス拡散層および発生した電子を伝導する役割を担っており、これにPt系触媒が使用されます。

従来はこの触媒が間接的に接しており、導電性の損失やガス拡散を妨害する可能性がありました。

EBINAXでは、この電極となる炭素系材料に直接Ptめっきを施すことが可能で、優れた触媒効果の発揮が期待されます。

 

燃料電池 電極 材料 めっき

 

高分子膜へのPt系触媒めっき技術

一般的な燃料電池(固体高分子形)は、Pt系触媒を炭素材料で担持し、それを高分子膜に塗布して使用されます。

この時、表層に出ておらず、十分に発電に寄与しない触媒が存在すること確認されています。

弊社では、高分子膜の最表層のみにPt系粒子を析出させることが可能で、高価な触媒を効果的に活用することで、コスト低減に貢献します。

 

 

燃料電池 電極 材料 めっき技術

 

燃料電池の電極材料へのめっきはEBINAXにご相談ください

今回説明した燃料電池「固体高分子形燃料電池(PEFC)」は、主に次世代自動車といわれる燃料電池車に利用される技術で、脱炭素社会へ向けた取り組みとして注目されている技術です。

社会に普及させるには更に燃料電池の材料の性能を向上させ、コストダウンすることが求められています。

中でも電極のPt系触媒の開発は低コスト化に直結する部分であり、そのPt触媒を有効利用する手法の1つとして「めっき」が活用できます。

弊社では様々なめっき技術を保有しておりますので、このような課題をお持ちの方はぜひご相談ください。

燃料電池の材料へのめっき、めっき技術等、様々なご相談を承ります。

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