ステンレスは酸化皮膜で黒色になる?発色する原理や付与される機能とは
技術コラム #16
ステンレスが酸化皮膜で黒色に発色する原理を解説します。またこの記事では、ステンレスへの酸化皮膜のメリットや機能性の他に、EBINAXのめっき技術についてご紹介します。もし迷光防止や反射抑制などの機能を充実させたい場合は、EBINAXの黒色めっき「スゴクロ」がおすすめです。
ステンレスが酸化皮膜で黒色に発色する原理
ステンレスが酸化皮膜で黒に発色する原理は、酸化が要となります。
ステンレスは錆の出やすい「鉄」成分も含有していますが、錆びにくい金属といわれています。
その理由は、ステンレス自体が自然に数nm程度の酸化皮膜(不働態膜)を形成するからです。
ステンレスは鉄にCr(クロム)やNi(ニッケル)等の金属が混ぜ込まれており、この主にCr(クロム)が酸化作用を引き起こして酸素と結合することで、緻密な皮膜が形成されます。
また、酸化皮膜は化学処理などで意図的に形成することも可能です。
ステンレスの表面に酸化皮膜を形成すると、光の干渉により発色して見えます。厚みは数~数百nmと非常に薄いですが、この酸化皮膜の厚みによって見える色味が変わってきます。
この酸化皮膜をある一定の厚みにコントロールすることで、ステンレスを黒く見せることができます。
黒色酸化皮膜(黒染め)で得られる機能とは
黒色に発色する酸化皮膜を形成することで製品の識別などが容易になる他、自然酸化皮膜(不働態膜)よりも皮膜が厚いため、ステンレスをより錆びにくくします。
酸化皮膜は厚いといっても、ほとんどが1μm以下程度なので、ステンレスの金属光沢など素地の質感やヘアライン等を活かしたまま成膜することができ、寸法精度にも影響を及ぼしません。
また、酸化皮膜は新たに塗装や別の金属皮膜などを形成するわけではないので、食品衛生法にも適した皮膜となります。
ステンレス材が使われている様々な分野に使用でき、酸化皮膜による黒染めは金型や機械・ロボット 部品、自動車部品などで活用されている技術です。
黒色酸化皮膜のメリット・デメリット
何も処理を施さないステンレスやその他の黒色処理と比較して、黒色酸化皮膜のメリット・デメリットは下記のようなことがいえます。
ステンレスの黒色酸化皮膜についてより詳しく知りたい方はぜひご参考ください。
黒色酸化皮膜のメリット
・黒による視認性の向上
・めっきや塗装に比べると安価
・ステンレスの防錆性の向上
・寸法精度の影響が少ない
・ステンレスの素材の質感を活かせる
・ステンレス製品とともにリサイクルでき、環境負荷が低減できる
黒色酸化皮膜のデメリット
・真っ黒の色味にはならない
・見る角度や素材によって、微妙に色味が異なる
・酸化皮膜は膜厚が薄いため、めっき皮膜に比べると耐食性は低い
酸化皮膜以外でステンレスを黒くするには
酸化皮膜でステンレスを黒くした場合を紹介してきましたが、酸化皮膜以外の方法でもステンレスを黒く色付けることは可能です。
ここからは黒色酸化皮膜以外の方法で、どのようにしてステンレスを黒くすることができるのかご紹介します。
例えば黒色酸化皮膜以外の方法としては、黒い塗料や顔料などでステンレスを塗装する方法、めっきやイオンプレーティングなどで黒い皮膜を成膜する手法などがあります。
ここでは、黒色塗装と黒色めっきについて紹介します。
黒色塗装
その名の通り、黒い塗料や顔料をステンレスに塗布することで製品の表面を黒くします。
黒といっても、光沢感があるのかマット調なのか、というように様々な”黒”がありますし、黒以外の成分も多数あるため、黒色酸化皮膜よりも塗膜のバリエーションが豊富といえます。
基本的には有機膜となるため、真空下や光学部品などでの使用は難しいですが(アウトガスが発生する懸念があるため)、色の種類にこだわりたい方は検討の余地があります。
黒色めっき皮膜
クロムやニッケルなどの金属を、通常のめっきとは別の条件で処理することで、ステンレスに黒い皮膜を成膜させることができます。
酸化皮膜よりも膜は厚くなるため、耐食性も高く、ステンレスなどの素材の材質に左右されずに成膜ができます。
また、皮膜の表面構造などを制御することで、酸化皮膜とは異なり、かなり反射率の低い、いわゆる”真っ黒”な皮膜が成膜できます。
金属などの無機物の皮膜のため、アウトガス発生の懸念も少なく、精密部品や光学部品などにも適しています。
反射抑制・迷光防止には黒色めっき「スゴクロ」がおすすめ
ステンレスを”真っ黒”な色味にして、反射率や迷光防止を抑制したいのであれば、酸化皮膜よりも黒色めっき皮膜を成膜することをおすすめします。
黒色めっき皮膜にも色々な種類がありますが、EBINAXでは、可視光の反射率を1%まで抑えた黒色めっき「スゴクロ」がございます。
弊社EBINAXは、ヱビナ電化工業の時から75年以上めっき業を営んでおりますが、長年のノウハウを蓄積しながら、皮膜の表面形態を微細に制御する技術を開発してきました。
通常のめっき皮膜よりも、微細な凹凸を緻密に形成させることで、マットで黒い色味を実現することができ、さらにステンレスの反射光や迷光を抑えることが可能です。
スゴクロの強みや機能性
スゴクロの強みは、なんといっても可視光の反射率が1%以下という低反射性です。
厚さ5μm程度の皮膜表面の形状を、微細な凹凸構造に制御することで実現しています。
皮膜はNi(ニッケル)の合金をベースとした組成ですので、真空下や精密部品などでもアウトガス発生の懸念が少なく、300℃の耐熱、温湿度サイクル試験をクリアする性能を確認しております。
スゴクロの用途
スゴクロはカメラ内部品やプロジェクター部品など、主に光学関係の分野で活用されています。
反射率を抑制することで、実際に画像のフレアやゴースト現象が改善されたとお客様からご報告いただいております。
素材はAl(アルミニウム)などステンレス以外の金属へも成膜が可能ですが、下地膜を処理する条件が変わってきますので、まずはご相談ください。
さらに、ステンレスなどの金属だけでなく樹脂材へも成膜が可能で、レーザーを照射した部分のみめっきが可能なLDS技術と組み合わせることで、樹脂材の一部にピンポイントで黒色皮膜を成膜することも可能です。
こちらの組合せ技術は、弊社のみ対応できる技術となっております。
ステンレスへの黒色めっきはEBINAXへご相談ください
今回はステンレスを”黒色にする”技術をご紹介しました。
ステンレスを黒色化する技術は様々な手法があるため、必要な機能が得られるかどうかの見極めが必要です。
弊社では、「反射率を抑えるために黒色にしたい」というご要望に対して、黒色めっき皮膜をご提供できます。
可視光での反射率を抑制する「スゴクロ」、また赤外光での反射を抑えたい場合は、「タフブラック」という黒色皮膜もご提案できます。
こちらは、宇宙分野でのご採用実績もありますので、ご興味のある方はお気軽にご相談ください。